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商法
『混迷の時代に必要なブレーン』

 現在は、混迷の時代である。今までに目ざしてきた目標や信じていた価値が音をたてて足もとから、崩壊している。
 企業の資産運用は、株式、土地なら絶対に大丈夫と信じてきた。それがバブルと化した我が社の経営理念もゆらぐ。
 日本国憲法は、自由、平等、博愛を宣揚している。しかし、博愛の名のもとに世界で戦乱のあとはたたない。平等も自由も、形骸化していて空虚である。もはやそこには、青年の血をたぎらせるに足る価値はないのかも知れない。
 混迷とは、枝葉、幹、根っ子が、上下、左右に入り乱れ、どこが根幹だかわからなくなっている状態である。このような時に我が社の方向性を希求する場合、まず、何が根本であるかを見定める必要がある。そのためには、会社の社史をひもとき、業界の来し方ゆくすえを訪ね、名著により日本経済、世界経済の方向性を勉強することも必要である。
 しかし、書物はいずれも過去のものであり、これから問うのに不充分である。さりとてこれらの勉強を社内の人に求めたのでは我が社の全体像はつかめない。各担当者はその担当職務に精通していても、全体像の把握には不向きであり、社長すら自分の立場にとらわれて我が社の正確な全体をつかむことは、その職分を越えたものである。自分の姿は自分には見えない。ましてや、将来の進路に至っては、いっそう心もとない。

 図表をご覧下さい。横軸に時間、縦軸に企業の発展(人、物、金、情報の総合的な)をとる。a0点にいる時、その企業はb0時点の我が社の発展方向はb1としか見えていない。しかし、国内外の経済界は、自社の努力だけでなく、世界の人々の各分野の進歩発展の力により、我が社の力でのみ予測したよりもより高度に発展していく。従って、我が社のb0時点における発展も、実はb2でなければ、経済界の発展におくれをとることとなる。一企業内という「井の中」にいたのでは、それをとうてい見通すことはできないのである。それではどうするのか。b0時点におけるb2の発展方向を示してくれる社外のブレーンを求めることである。戦乱の武将たちは、古典をひもとくかたわら、すすんで師を求め、これに師事して教えを請うた。人は、優れた宇宙観の持主(師)との出会なくして、自分の全姿を知ることはできないし、自分の将来の方向性を知ることも出来ない。
 我が社に社外ブレーン(師)を迎える法律上の制度を紹介しよう。一つは社外取締役、社外監査役がある。これは、我が社の経営に関与し、役員としての連帯責任が生じるものであるから、経営に練達した先達経営者、あるいはキラリと光る方向感覚をもつ同輩、後輩経営者にお願いするのに適している。
 二つには、顧問、相談役がある。これは我が社と委任関係に立つものである。高度な専門化、高い思想性、広遭な宇宙観の持主にお願いする場合に適している。いずれについても、よきブレーンを得て、一日も早く混迷の中に進むべき道標を求めたいものである。

弁護士 中園 繁克